HOME                
 

 

    XMLコンソーシアムのご紹介
    〜ビジネスと社会基盤のためのXML,Webサービスの普及を目指して〜
     
    1. はじめに
    XMLコンソーシアム[1]は,日本におけるXML(eXtensible Markup Language),Webサービス,SOA(Service Oriented Architecture)関連の普及啓発,アプリケーション開発およびシステム構築の推進,ならびにXMLボキャブラリーの標準化を支援する非営利団体である。XML技術の普及 啓発活動を推進してきた3団体を融合する形でオープンなコンソーシアムとしてXMLコンソーシアムを立上げ, 2001年4月より本格的な活動を開始した。
    急速にXML技術の普及と応用技術開発の進む中、XMLコンソーシアムは当初の3期目を終了し,2004年6月より,XMLコンソーシアムの名称を継承しつつ,ビジネスと社会基盤のためのXML,Webサービスの普及を目指して,新たなスタートを切った。現在の会員数は、200社を超え、特定のベンダーに偏らず、多くの関係者の協業をベースとした活動にさらなる期待が集まっている。本発表では,XMLコンソーシアムの新たな活動とこれまでの成果を紹介する。
     
    2. 2004年度の活動方針
    (1)基本方針
    基本方針として,XML,WebサービスおよびSOAの,@普及・啓発,A研究・実証,B標準化活動を実施する。また,XMLコンソーシアムの特質,特長である@中立性,A他団体との協業,B一社ではできない活動,競合関係を超えた活動,C人的ネットワークの構築,D成果物の公開などの活動に対して,さらなる拡充を図る。
    (2)新しい取り組み
    XMLコンソーシアムでは、設立当初より、部会、月例セミナーなど活発な活動を行なってきた。2004年度の新しい活動への取り組みでは,将来を見据えた新しい活動テーマとして,SOAを設定し,SOA部会を新設した。また,社会基盤に対するXML,Webサービス,SOAの有用性の研究,検証,訴求の観点からユビキタス・組み込み系部会を新設し, YRPユビキタスネットワーク研究所や情報処理学会ディジタル・ドキュメント研究会等の他団体との協業による補完活動を推進していく。ビジネスに対するXML,Webサービス,SOAの有用性の研究,検証,訴求の観点からビジネス・イノベーション研究部会を新設する。
    2004年度の活動の強化・改善点は,利用者の視点からの普及活動として,特定業種をテーマとする実証実験の実施と成果物の一般公開や標準化支援活動との連携による実証実験,標準実装でも構築実装のためのガイダンス作成などに力をいれる。2003年度より実施しているユーザー企業に対する普及 啓発活動のユーザシンポジウムや地方に対する普及啓発策としての地方セミナ・イベントをさらに充実させる。標準化の推進では,2003年度から開始した旅行業界商取引向けTravelXMLのフェーズ2の開発,OASISとの協業形態の検討,業界団体との協業推進を図る。他団体との連携では,既存の連携強化に加え,新しい連携関係を模索・検討していく。
     
    3. 活動の概要
    (1)組織と部会活動
    現在、XMLコンソーシアムは図1に示す組織構成からなり,技術系,ビジネス系,標準関係の「部会」を持ち、それぞれの部会が活発に活動している。XMLコンソーシアムの会員であれば、どの部会にも制限無く参加することができる。
    (2)XMLコンソーシアム・セミナー
    「XMLコンソーシアム・セミナー」は、XML普及啓発活動の一貫として積極的に取り組んでいる活動である.当セミナーは、最新の情報を研究者や現場の第一線のエンジニアを講師に招き、毎回、価値の高いXML関連情報の発信を行なっている。 密度の濃いセミナーとして、参加者の評価も大変高い。
    (3)標準化支援
    XMLコンソーシアムで近年力を入れている活動がさまざまな業界における標準化支援である。 ContactXML部会メンバーによるContactXML勧告、(社)日本旅行業協会との協業によるTravelXML(旅行業商取引仕様)の開発や、(財)日本デジタルコンテンツ協会との協業によるContentsBusinessXMLの勧告などがある。
    (4)エバンジェリスト
    XMLコンソーシアムでは、会員企業に所属するXMLおよび関連技術のエキスパートをエバンジェリストに任命している。現在、XMLコンソーシアムのエバンジェリストは23名でXMLコンソーシアムのセミナーだけでなく、各種カンファレンスにおいて、幅広く講演活動を行なっている。さらに、エバンジェリストは雑誌やWebメディアなどへの執筆活動も行い、XMLの普及に大きく貢献している。
    (5)XMLコンソーシアム外の活動の支援
    XMLコンソーシアムでは、コンソーシアム内の活動だけでなく、他の団体のXML普及啓発活動も支援している。
    これまでの連携関係では,国土交通省「観光とIT調査研究会」,日本旅行業協会,XBRL Japan,ECOM,WS-I JSIG,OMG,DOPG,製造業XML推進協議会と連携関をもっている。2004年度は新しい連携関係の拡大を図っていく。
    また、その他のXML関連イベントなどの後援なども積極的に行い、XMLコンソーシアム外でのXMLの普及啓発活動にも一役買っている。
     
    4. 標準化によるイノベーション
    XMLコンソーシアムでは、昨年度より新しい活動として、XMLベースの業界仕様標準化を推進支援している。以下に、最新の2つのイノベーションを挙げる。
    4.1. TravelXML
    TravelXMLは、社団法人日本旅行業協会との協業によって、従来各旅行会社で個別に定義されていた旅行業EDIをインターネットベースで標準仕様化したものである。通信手段としてインターネットとXMLを採用することによって、国内外の宿泊施設、ツアーオペレータ、旅行業者などをリアルタイムで結び、業界全体のシステムの効率化による業務スピードの向上と、コストダウン、そして顧客へのサービス向上を実現する。
    2004年2月には、標準化の第1フェーズとして@「海外ホテル/ツアーオペレータへの手配データ提供仕様」A「国内旅館・ホテルとの在庫照会・予約とに付随する手配データ提供仕様」、B「パッケージツアーへの在庫照会、予約と付随する通知類仕様」の三つの商取引について標準化を行ないその仕様を一般公開している。
    更に、2004年10月には標準化の第2フェーズの第1段階として、以下の3つの商取引について新たに開発作業を進め、TravelXML 1.2 勧告として、その仕様の一般公開を開始する。
    @「旅行会社/国内宿泊施設の決済データの標準仕様」 
    A「国内宿泊施設からの施設情報・タリフ情報類の標準仕様」
    B「旅行会社からサプライヤーへの提供企業情報の標準仕様」
    4.2. ContentsBusinessXML
    2003年9月にXMLコンソーシアムの勧告となったContentsBusinessXMLは、財団法人デジタルコンテンツ協会とXMLコンソーシアムの協業で、コンテンツ流通関連事業者(権利団体、コンテンツホルダ、配信事業者など)の協力を得て体系化した取引関連の情報項目(メタデータ)をベースに、今後の市場ニーズに先行対応するためにXMLによる標準化を行なったものだ。この規格は、コンテンツ流通市場における配信許諾、利用許諾の多層的取引(権利団体⇔コンテンツホルダ⇔配信事業者)における処理の自動化を可能にした。
     
    5. 最新の活動トピックス
    5.1. 観光情報集配信Webサービス実証実験
    2003年5月に日本観光協会の協力を得て実施した「観光情報集配信Webサービス実証実験」は、さまざまなベンダーのWebサービス環境を組み合わせ、実データを使用して実際に想定される市町村の各観光課からエンドユーザまでの一気通貫のサービスを、Webサービスにより構築した。これは,観光情報に関するWebサービスを利用した国内初の実証実験である。
    5.2. 旅行業商取引Webサービス実証実験
    旅行業界における電子商取引の標準「TravelXML」とWebサービス技術を利用した旅行業界の電子商取引の新たなモデルを実現するための実証実験を2004年5月に実施した。実証実験では、(社)日本旅行業協会の協力を得て、旅行商品(旅行パッケージ)を扱う電子商取引モデルを構築した。本モデルでは、旅行企画会社(ホールセラー)、旅行代理店(リテーラー)、宿泊施設(ホテル・旅館)の3者の業務システムをすべてWebサービスで連携し、(1)従来からある非同期型の取引形態、(2)Webサービス適用のメリットを生かしたリアルタイムな取引形態、(3)取引電文を部分暗号化したセキュアな取引形態を実現した実証実験を実施し、実ビジネスに即したTravelXML、およびWebサービスの有効性を検証した。
     
    6. おわりに
    以上のようにXMLコンソーシアムでは、XMLやWebサービスの価値をビジネスや社会基盤として最大限に生かすための活動を行ない,着実な成果を上げてきた。本年度からは、活動テーマにSOAを加え、更なる活動強化を行うとともに、ベンダーにはビジネス・リタラシーを、ユーザーにはITリタラシーを習得できる機会を提供し、利用者と提供者が率直に語り合える場を充実させていく。 XMLコンソーシアムでは,これらの活動に興味がある方々の積極的な参加を歓迎する。
     
    文 献:http://www.xmlconsortium.org/
     
    文  責:XMLコンソーシアム副会長、運営委員会議長
    田原 春美 (日本アイ・ビー・エム株式会社)



 
Copyright(C),2000-2004 The XML Consortium
入会申込