===================================== XML Consortium News X M L コ ン ソ ー シ ア ム ニ ュ ー ス 2005年1月 創刊特別号 ===================================== XMLコンソーシアム会員の皆様、はじめまして。 今年から月刊でメールマガジンを配信いたします。コンソーシアムの最新ニュース や部会の活動紹介を中心に、活動の促進に役立つ情報発信を行います。今回は創刊 特別号として、二大特集でお送りします。今後も末永くよろしくお願いいたします。 メールマガジンの配信先については末尾の案内をご覧ください。 ===================================== 【目次】 ===================================== ◆特集1:活動はビジネス・オリエンテッドへ ◆特集2:XMLコンソーシアムDAY報告 ◆活動実績(2005年1月) ◆今後の予定 ===================================== 【特集1:活動はビジネス・オリエンテッドへ】 ===================================== メールマガジン創刊にあたり、副会長のお二人(インフォテリアの平野氏、日本 IBMの田原氏)にXMLコンソーシアムの経緯と将来についてお話をお伺いしました。 XMLコンソーシアムはその特徴として、中立性、企業の垣根を越えた共同活動、そ の過程で確立されていく人やビジネスのネットワーク、そして成果物は公開すると いう活動の透明性などが挙げられます。 これまでの活動ではXML技術の研究や標準文書の翻訳等を通じ普及と啓蒙に貢献し、 Webサービスでは模擬実験から実証実験へと発展させ、また業界団体と標準化ボキャ ブラリーを共同開発するなど実績を上げてきました。特に設立した2001年から 2003年までの活動は技術を中心に繰り広げられてきました。 しかし、本質的なスタンスはそのままに、昨年からコンソーシアムは新しい段階へ と歩み出し始めました。違いは指向がシフトしてきているということです。従来の 「テクノロジー・オリエンテッド」から「ビジネス・オリエンテッド」へ。活動は 実在するビジネスを見据えた段階へと着実に移ってきています。 その背景には、XML技術を取り巻く環境の変化があります。コンソーシアムが設立 した当時と比べて昨今では、技術の完成度も浸透状況も大きく変化しています。 SOA、モバイル、組み込みといった新出キーワードも登場してきました。 そんな時代に呼応するようにコンソーシアムも変化しようとしています。2004年か らは部会の再編成や新設を行いました。新設された部会には、 SOA部会、ユビキタ ス・組み込み系部会、ビジネス・イノベーション研究部会があります。どこも先日 開催されたXMLコンソーシアムDAYの講演を見てわかるように、活発に活動を繰り広 げています。 またいっぽう、技術が急速に進化を遂げながらも、田原氏はまだ「ITとビジネスが 乖離(かいり)している」と懸念を抱いています。ITは本来ならビジネスをの効率 化、戦略化するのために導入されるものなのに、まだうまくかみ合っていない場面 も見受けられます。その状況は一様ではなく、多くの要因も考えられますが、その ひとつにユーザーとベンダー間の距離も考えられます。 そうした状況の打開に一役買うためにも、会員枠を拡大し、多様な立場を迎え入れ るように規約を改正しました。ユーザー・シンポジウムやユーザーのための勉強会 にも、力を入れています。また2004年新エバンジェリストの顔ぶれも新生XMLコン ソーシアムの息吹を感じさせます。これまでエバンジェリストは最先端技術を代表 するカリスマ的エンジニアが多く名前を連ねていました。しかし新エバンジェリス トにはユーザーの立場にいる人やこれまでとは違った分野の人も並んでいます。 新生XMLコンソーシアムは、XML技術に主眼をおきながらも、技術理論だけではなく、 より広範囲に実践的に、その活動の幅を広げています。今後のコンソーシアム活動 はますます意義が高まり、成果に期待が高まります。 ===================================== 【特集2:XMLコンソーシアムDAY報告】 ===================================== 1月13日から2日間にわたり、XMLコンソーシアムDAYが開催されました。 開催案内:http://www.xmlconsortium.org/seminar/d06/annai_final.html −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ◆ビジネスイノベーション(BI)研究部会、SOA部会 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− [講演タイトル・講演者] 「ビジネスイノベーション研究部会とSOA部会活動のご紹介」 (ブレイニーワークス 芦田 尚人氏) 「SOAのパターンとベストプラクティス」 (日本IBM 天野 富夫氏) 「販売管理業務を題材にしたビジネスプロセス分析報告」 (キヤノン 倉沢 良明氏) 「サプライチェーンの付加価値向上のためのSOAベースモデリング」 (ウルシステムズ 林 浩一氏) 「ビジネスプロセスのモデル記述」 (日本ユニシス 牧野 友紀氏) コンソーシアム内では新顔の部会ですが、活発な活動を展開しています。両部会は ともにビジネスに立脚しているため協調ことが多くありつつも、視点に違いがあり ます。 SOA部会はIT技術からのアプローチで、BI部会は経営からのアプローチで考 察しています。 SOA部会はビジネスを実現するためのデザインや手法を論じ、かつその普及や啓蒙 に主眼をおいています。2004年は特にSOA活用の具体的なシナリオを考察してきま した。今回の講演にあるように、SOAやWebサービスで役立つパターンやベストプラ クティスも成果として上がってきています。他にも部会内では概説や用語集などの 技術資料にますます磨きをかけています。 いっぽうBI部会はビジネスを経営的観点から見つめ、そこにどういうシステムを導 入すれば最適かを会員同士でともに考えています。部会を通じビジネスアーキテク チャの基本的な知識を高め、具体的なビジネスを例にモデルを作成するなど行って います。特に有益なのはユーザー企業の会員がサンプルとして実ビジネスで抱える 背景や課題を提示し、参加者同士でその命題を解くという活動です。 部会は志願者による共同作業の場というよりは、願ってもないノウハウを得る貴重 な場にもなりえます。ベンダーなら「ビジネス現場の深層」、ユーザー企業なら 「技術手法コレクション」を享受できる可能性があります。ただしこうした知識や 理解を得るメリットは、実際に参加することで真の効果が現れてくるようです。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ◆TravelXML標準化部会 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「旅行業業界の商取引向けXML標準 - TravelXML 1.2.1 - の開発状況」 (NTTデータ 遠城 秀和氏) XMLコンソーシアムの代表的な成果物であるTravelXMLは、今やコンソーシアムを飛 び立ち、実用段階へと突き進んでいます。 勧告となったTravelXMLには Ver 1.1がありますが、拡張が続けられて昨年末に Ver 1.2.1が勧告案となっています。Ver 1.1 では、(1)国内宿泊手配、(2)海外ホ テル仕入れ、(3)国内企画商品取引、(4)海外企画商品取引があり、Ver 1.2では (5)国内精算情報、(6)国内宿泊施設情報、(7)旅行会社情報、が追加されました。 昨年は実証デモの記者会見も開催され、多くのシステムが連携を取る様子が見事に 証明されました。実証実験の準備では各ベンダーの技術者が夜な夜な集い、試行錯 誤もあったとか。業務とはまた違った苦労をしながらも、成功した時の喜びはひと しおだったそうです。 今後は Ver 1.3 でパッケージツアーの商品内容データを追加、Ver 1.4 で海外宿 泊施設・観光施設からの施設情報・渡航手続き・見積もり/タリフデータ類が追加 される予定です。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ◆セキュリティ部会 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「セキュリティ部会の取り組み - セキュリティ関連XML規格の解説」 (ネット・タイム 岡村 和英氏) セキュリティはポリシーから監査まで階層があり、また個々の標準技術の関連性や バージョンの推移も追わなくてはなりません。またセキュリティはどんなシステム にも導入されるべき基盤的な要素で、正確性も要求され、重要性の高い存在です。 セキュリティ部会はセキュリティ技術そのものの研究と啓蒙を中心に、時には他部 会と連携して実証実験に参加するなど幅広く活動しています。2004年度はWebサー ビスセキュリティ規格の翻訳、セキュリティに関係した各種 XML規格の性質や関係 性の調査、およびセキュリティモデルの検討と解説を中心に活動しています。 なかでも2004年4月にOASIS標準となった WS-Security を深く研究し、昨年末には 翻訳作業が完了しました(副産物として用語集も潤沢になったという恩恵も)。そ の翻訳物は現時点では最終確認の段階です。今後はSAML、XML署名、XML暗号なども 題材に採りあげて研究や翻訳を続け、技術資料を拡充していく予定です。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ◆Webサービス実証部会 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「愛知万博における道路交通情報を利用した複合Webサービス実証実験」 (東京エレクトロン 松永 豊氏) Webサービス実証部会はこれまでさまざまな題材を用いて実証実験を行ってきまし た。当初は四則演算といった簡易なものから、NewsMLからTravelXMLなど徐々に本 格的な実装へと、その規模や内容を発展させてきています。 コンソーシアムだからこそ多様な企業から多様なエンジニアが参加して、実際に連 携するシステムを作りあげることができます。Webサービス実証部会は日本XML界の ドリームチームと言えます。 昨年のTravelXML実証実験では実装で起因する細かな注意点が見つかり、実用的な 教訓を多く残すことができました。例えば、エラー時の原因究明のためにもアプリ 開発とセキュリティ実装は分離すること、各パッケージの特性を生かす適用方法、 標準仕様やWebサービスを利用するメリットが明確化したことなどが挙げられます。 次の題材は道路交通情報を用いた旅行プラン作成Webサービスです。道路交通情報 とは道路の渋滞や規制などで、ドライブ時には欠かせない情報です。この情報に加 えて、気象情報、宿泊情報、観光情報、地図情報などを組み合わせ、旅行の過程で 効率的で柔軟な計画が組めるようにするものです。 技術的にはビジネスプロセスのBPELを用いることになっており、その真価も試され ることになります。またこの実証実験は愛知万博に出展する予定でもあり、現時点 では鋭意開発中です。その姿は近々明らかになるでしょう。 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この部会は「ユビキタスという構想を組み込み系という技術でいかに実現するか」、 そう説明することもできるかもしれません。 ユビキタス・組み込み系部会が扱う話題は、社会からの注目や期待が高いものばか りです。具体的には、LBS(Location Based Service)、電子タグ、音声システム 応用、モバイル端末、そしてスタートレックまで。高度な技術の最新動向から社会 への影響を幅広く研究しています。 今後この分野で技術的な実装が爆発的に進展することは明らかで、動向を見極めな がら活動の方向性を模索することもあるかもしれません。とても変化が激しく、多 様なもの(製品からサービスまで)を広範囲に扱っている部会です。 ユビキタスでは期待や可能性の良い側面のほかに、個人情報の扱いについて不安や 課題も多く存在します。まず前者を見ると、個人の位置情報には有用な活用価値が あることです。携帯などにより、システムが個人の位置情報を取得することができ ます。いま、それらを有効活用する方法がいろいろと考え出されてきています。 いっぽう、現実的にはプライバシーに不安を抱える人も多く存在します。個人情報 をどう保護するか、どう効率的かつ合法的に扱うかが課題です。技術的な実現手法 からコンプライアンスまで多くの検討項目があります。 今後はユビキタスネットのビジネスやサービスのモデル、またその技術的実装、他 にも社会のルールやガイドラインを検討する予定です。 ===================================== 【活動実績:2005年 1月】 ===================================== ◆1月13日〜14日:XMLコンソーシアムDAY ◆1月19日:セキュリティ部会 ◆1月20日:運営委員会      メタデータ活用部会      SOA部会+BI研究部会 ◆1月21日:ユビキタス・組み込み系部会 ◆1月28日:Webサービス実証部会 ===================================== 【今後の予定】 ===================================== [公式イベント] ◆2月 7日:TravelXML標準化部会(NTTデータ 豊洲センタービル) ◆2月10日:運営委員会(日立ソフト) ◆2月16日:セキュリティ部会(ネット・タイム 本社) ◆2月17日:SOA部会+BI研究部会(日本IBM 箱崎事業所) ◆2月24日:ユビキタス・組み込み系部会(日立 大森ベルポート) ◆2月25日:メタデータ運営部会+Webサービス実証部会(日立 大森ベルポート) ◆4月15日:ユーザーシンポジウム(東京コンファレンスセンター・品川) ◆5月27日:XMLコンソーシアム総会(東京コンファレンスセンター・品川) ◆2月末〜3月上旬開催予定  XMLコンソーシアム・セミナー XML-DB特集 ◆5月〜6月開催予定  XMLコンソーシアムWeek [関連イベント] ◆2月2日〜4日  PAGE 2005(サンシャインシティコンベンションセンターTOKYO)  http://www.jagat.or.jp/page/ ◆2月3日〜4日  Developers Summit 2005(青山ダイヤモンドホール)  http://www.seshop.com/event/dev/ ◆2月18日  XMLマスターDAY 2005(コクヨホール)  http://www.xmlmaster.org/event/xm050218/ ===================================== 【編集後記】 ===================================== 自分の仕事を話すと「XMLとは?」と訊かれ、言葉に詰まることがあります。特に 普段からパソコンに慣れ親しむことすらない友人にはどう説明したらいいものか。 とりあえず「データを表現する方法」と答えてみるものの、XMLの影響力や可能性 を考えると「これだけの説明では足りない」と、もどかしく感じます。 XMLの偉大さにはあらゆる垣根を越えて標準を策定したりシステムを連携させたり する点が挙げらると思います。つまり技術策定や実践において協調すること、民主 的なところです。そうした側面も強さの秘訣ではないかと感じます。 そうしたXMLを実践する人たちだからこそ、先日開催されたDAYではどの部会からも 「一緒にやろう!」という意気込みがビシビシと伝わってきました。次にどの部会 にお邪魔してお話を聞こうか、いまとても目移りしています。 ===================================== 【このメールマガジンについて】 ===================================== 今回の創刊号はXMLコンソーシアムからのインフォメーションをお送りするアドレ スにお送りしました。次回以降の配信先の変更や追加、および要望はXMLコンソー シアム事務局(xmlcons@fsi.co.jp)までご連絡ください。 なお、当メールマガジンはXMLコンソーシアム会員を対象に発行しております。 転送する場合は社内に限定するなど、ご配慮をお願いいたします。 発行人:鶴保征城 編集人:加山恵美 Copyright(C) 2005 The XML Consortium =====================================