===================================== XML Consortium News X M L コ ン ソ ー シ ア ム ニ ュ ー ス 2006年6月号(2006年5月31日発行) =====================================  もうすぐ梅雨ですね。先日近所で傘を修理してくれる店を偶然発見しました。壊 れた傘を2本も抱えていたのですが、なかなか見つからなかったのです。これでよ うやく修理できました。傘を捨てずにすんでよかったです。 メールマガジンの配信先については末尾の案内をご覧ください。 ===================================== 【目次】 ===================================== ◆特集:XMLコンソーシアムWeek、Web 2.0時代のエンタープライズシステム ◆活動実績(2006年5月) ◆今後の予定 ◆運営委員会から ===================================== 【特集:XMLコンソーシアムWeek、Web 2.0時代のエンタープライズシステム】 =====================================  XMLコンソーシアムWeekはコンソーシアム活動の核となる部会活動の成果を発表 する場です。今年は特に「Web 2.0」という時代のキーワードに絡め、エンタープ ライズシステムのありかたやXML技術を考察した発表が相次ぎました。Web 2.0が着 目される背景、Web 2.0を通じて見える将来像、Web 2.0的なシステムを安全に実装 する上で必要な基盤技術など、多角的なアプローチでWeb 2.0時代の実態が浮き彫 りになりました。 ◆第5回XMLコンソーシアムWeek開催のご案内 http://www.xmlconsortium.org/seminar/06/060522-26/060522-26-info.html ※当日の資料は追ってコンソーシアムのサイトに掲載する予定です。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ◆XML Day:XMLがもたらした「つくる」から「つなぐ」への進化 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  初日は基調講演に続き、TravelXML標準化部会、関西部会、セキュリティ部会の 発表が行われました。 講演タイトル:------------------------------------------------------------ −基調講演「Web2.0と新しいネットワーク・メディア」 −旅行業業界の商取引向けXML標準 - TravelXML 1.4 -の改定状況 −関西部会活動報告:「こんな風に活動してますねん。」 −XMLを応用したシステム構築事例の収集と分析:「どこで使ってますねん」 −Web2.0的地図/スケジュール共有サービスの実装:「どこで何してますのん?」 −Webサービスを支えるセキュリティ技術 --------------------------------------------------------------------------  基調講演ではXMLコンソーシアムの顧問でもある、稚内北星学園大学学長 丸山不 二夫氏が通信やコンピュータの発展を語りました。今から150年ほど前、ペリーが 日本に持参したものの中に電信機もあったそうです。日本のグローバルなネットワ ークの幕開けだったのかもしれません。今年は日米をつなぐ太平洋横断海底ケーブ ルが開通してちょうど100年目だそうです。のちに電話やコンピュータが登場し、 インターネットが普及してきました。近年ではブログなど情報提供側の爆発が新し い動きを発生させています。それを背景に生まれた新しいシンボルがWeb 2.0であ り、いま世間は「大きな変化を予感している」と丸山氏は分析しています。  関西部会からは朗らかな雰囲気で活動発表が行われました。関西部会はほかの部 会と違い内容ではなく地理的なくくりで設けられた部会ですが、加えて「キャラで くくった部会」でもあるそうです。部会はXMLの活用事例の研究やWebサービスの実 装実験など実直な活動をしつつも、常に関西独特の気さくな雰囲気に包まれている とか。なお6月20日にはXMLコンソーシアム関西DAYを開催します。  TravelXML標準化部会はTravelXML 1.4に至るまでの経緯と最新版の改定状況、さ らに今後の構想を語りました。またセキュリティ部会は部会で研究しているXMLや Webサービスに関係する各種セキュリティ技術について、概要からそれぞれの関連 性などを簡潔に解説しました。この知識はsPlatプロジェクト活動の土台ともなっ ています。さらにWebサービスを支えるセキュリティ技術の最新動向として、OASIS WSS技術委員会や新しく結成されたOASIS WS-SX技術委員会(Webサービスのセキュ アな交換)の現状が詳細に報告されました。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ◆Web 2.0 Day(1):エンタープライズシステム革新の入口はSOA2.0かKM2.0か? −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  2日目はドキュメント・メタデータ活用部会がWeb 2.0技術をエンタープライズシ ステムに応用する際の着目点や具体的な技術について紹介しました。 講演タイトル:------------------------------------------------------------ − "Web2.0 for Enterprise" について −魅力的なWeb2.0的アプリケーションをどうやって考えるか −企業でのポータルと、リッチ・クライアント、マッシュアップの活用 −REST API + XSLT:エンタープライズ・マッシュアップの実際 --------------------------------------------------------------------------  振り返ってみるとXMLコンソーシアムのイベントで「Web 2.0」というキーワード が言及されるようになったのは2005年12月に開催されたXMLコンソーシアム DAYか らです。以来、各部会がWeb 2.0に注目するようになりましたが、特に力を注いで Web 2.0の流行を追求したのはドキュメント・メタデータ活用部会でしょう。  2005年度初頭のドキュメント・メタデータ活用部会ではブログの活用やリッチク ライアントなどを採りあげて研究を進めていました。Web 2.0はこうしたテーマと 関係が深く、それゆえにWeb 2.0という潮流に真正面から向かい合うことができた のかもしれません。  今年に入ると世間も次第にWeb 2.0に着目するようになりました。XMLコンソーシ アムおよびドキュメント・メタデータ活用部会はその一歩先を見つめ、Web 2.0と エンタープライズシステムを絡めて考えて情報や提言を提供することにしました。 2006年3月に開催した第一回目の「Web 2.0勉強会」では、会場にあふれんばかりの 人が押し寄せ、翌月開催された第二回目の勉強会でも大入り満員でした。Web 2.0 をエンタープライズシステムに応用することへの関心の高さがうかがえます。  Web 2.0勉強会や今回のWeekではWeb 2.0的なサイトやアプリケーションの特徴や、 それを実現するための具体的な技術を解説してきました。魅力的で有効な企業ポー タルのありかた、高機能なリッチ・クライアント、Webサービスで機能を組み合わ せるマッシュアップの具体的な手法など、どれも聴衆は熱心に耳を傾けていました。 近く第三回目のWeb 2.0勉強会を開催する予定です。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ◆Web 2.0 Day(2):Web2.0的アプリケーションの創造に向けて −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  3日目はWebサービス実証部会がMAPediaの開発状況を報告し、またWebサービス実 証部会とセキュリティ部会がiPlatプロジェクトの進ちょく状況を報告しました。 講演タイトル:------------------------------------------------------------ −MAPediaの開発状況 −暗号化XMLデータ利用技術についての課題と対策 --------------------------------------------------------------------------  世間では「Web 2.0」の熱気が日増しに高まっているのに対し、Webサービス実証 部会やセキュリティ部会はどこか冷静です。なぜならメンバーにとって「その感動 は体験済み」のようなのです。  昨年は愛知万博を舞台にあまたのWebサービスを接続したiPlat実証実験がありま した。当時まだWeb 2.0という流行語は登場していませんでしたが、Web 2.0の要素 はおおよそiPlatに盛り込まれています。例えば集合知、リッチなユーザー経験、 プラットフォームとしてのWebなど。メンバーはiPlatで一足早くWeb 2.0的な新し い動きを体感していたようです。  iPlatプロジェクトに続くWebサービス実証実験のテーマは現在模索中です。今や Webサービスは「つながって当たり前」で、かなり手軽になりました。最近までWeb サービス実証部会ではMAPediaというユーザー参加型の地図を検討していましたが、 似たような発想のサイトも散見するようになり、構想を見直しています。しかし MAPediaは地図や写真と文書の連携やコンテンツ管理という視点からも企業内での 有用性があります。今後の構想の発展に期待しましょう。  いまWebサービス実証部会とセキュリティ部会は合同でsPlatプロジェクトに注力 しています。これはWebサービスを使い複数のサイトでデータを中継する時、暗号 化を施そうとすると中継地点のスキーマ検証で問題が発生することがあり、それを 解決するための技術を考案しようというものです。今回は基礎技術から丁寧に解説 し、解決策の候補や実装方法、また今後の課題や活動の方向性も示しました。将来 的にはポリシー設定用のGUIツールを開発することも予定しています。  sPlatプロジェクトのテーマはXMLコンソーシアムの実証実験に限って発生する問 題ではなく、高度でセキュアなWebサービスを構築しようとすれば誰もが直面する 可能性があります。またセキュアなWeb 2.0サイトを実装しようとするなら知って おくべき基礎技術を考察しているという点で重要です。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ◆ユビキタス Day:ユビキタス The Next Generation〜人に優しい社会を目指して −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  4日目はユビキタス・組み込み系部会がゲスト講演やパネルディスカッションを 通じWeb 2.0という流行を生んだ現状を考え、また将来を展望しました。 講演タイトル:------------------------------------------------------------ −ユビキタス・組み込み系部会活動紹介 −ゲスト講演「スローなユビキタスライフ」 −パネルディスカッション「Web2.0時代のユビキタス」 --------------------------------------------------------------------------  ユビキタス・組み込み系部会では毎回多様な題材をもとに技術検証を行っていま す。加えて社会的な動向や将来も考察する視点がこの部会の特徴でもあります。  ゲスト講演では「スローなユビキタスライフ」の著者、ユーディットの関根千佳 氏をお招きしユニバーサルデザインなどユビキタスの将来像を語ってもらいました。 関根氏の著書ではそれぞれのニーズに合ったIT機器を個々人が持ち活用する近未来 が著されています。「子には生きる力を、シニアには生きがいを」と関根氏は熱く 話していました。講演では江戸時代の筆記具「矢立」に似せたPDA、ソロバンに似 たスマートフォンのようなものもサンプルとして紹介されました。関根氏が語る 「地域の情報は市民が作る」などの発想はWeb 2.0に通じるところがありそうです。  パネルディスカッションではパネリストの専門分野から質疑応答、実に幅広い内 容となりました。冒頭ではまずユビキタスとWeb 2.0をキーワードにしてパネリス トが簡単に意見などを述べました。列挙するとWeb 2.0がユビキタスに与える影響、 ヒューマンコミュニケーション、ネットワーク技術、セキュリティや犯罪などのダ ークサイド、現状の課題やアーキテクチャなどです。  司会者は「ユビキタスな社会へ劇的な変化が起こるとしたら何年後か」「将来の ユビキタス端末の価格帯は」「ユビキタス社会で将来のコミュニケーションはどう 変化していくか」といずれも興味深い問いをパネリストに投げかけていました。ど れも単純明快な答えが出るものではなく、パネリストとともに聴衆自身も多くの意 見を聞きながら考えることができて有意義な時間になったことでしょう。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ◆SOA Day:ビジネスプロセス・モデルからSOAサービス・モデルへ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  最終日はSOA部会が種々の表記法を紹介し、BI研究部会が架空の会社を想定した ビジネスプロセスのモデリングを行った結果を発表しました。 講演タイトル:------------------------------------------------------------ −絵で描くSOA −ゲスト講演「サービス指向ソフトウェアとプラットフォーム - 動向と展望 -」 −SOAに繋ぐビジネスプロセスのモデリング −ビジネスプロセスを基点にしたサービス導出の試み --------------------------------------------------------------------------  SOA部会ではSOAを描画する手法を比較検討しました。2005年12月のXMLコンソー シアムDAYではグレゴールグラムを紹介しましたが、その後ほかの表記法も研究し ました。BPMN、UML、グレゴールグラム、拡張グレゴールグラム、(マイクロソフ トの)DSL、WS-BPELダイアグラム(仮称)、アセンブリダイアグラムです。今回は これらの表記法の特徴を比較した結果を発表しました。なお比較のための共通指標 には視点と対象物を並べたマトリックスであるザックマンフレームワークを用いま した。これによりモデリング対象の位置づけを把握して比較することができます。  ゲスト講演は日本アイ・ビー・エムの浦本直彦氏がSOAについての最近の動向や XMLの差分処理技術について解説し、またWeb 2.0がSOAなどにどう影響するかも言 及しました。浦本氏によるとSOAのコンセプトは浸透しつつあり採用も増えてきて います。同時に価値の提示方法や粒度の定め方など課題も見えてきました。最近で はWeb 2.0やRESTにより、アプリケーションの初期開発がIT部門からビジネス部門 へ、ロックインポイントがミドルウェアからデータへという新しい動きをもたらし ているという指摘がありました。  BI研究部会では架空のOA機器販売企業におけるビジネスプロセスのモデリングを 行いました。部会内で2チーム作成し、それぞれ独自に同じ思考実験を試みたため 結果に多少の差異がありました。片方は実務経験からシナリオを思い浮かべてモデ リングを行うアプローチであり、もう片方は現役エンジニアが多くアクティビティ を起点にサービスを考えるというアプローチだったため、その違いが結果にも表れ ていました。しかし違いは正否ではなく個性であり、思考実験に参加して何度も試 行錯誤をしてビジネスプロセスのモデリングを体得したことが真の成果だったとい えるでしょう。 ===================================== 【活動実績:2006年4月】 ===================================== ◆5月11日(木):ユビキタス・組み込み系部会 ◆5月11日(木):部会リーダー会、運営委員会 ◆5月16日(火):関西部会 ◆5月18日(木):BI研部会/SOA部会 ◆5月18日(木):ビジネスシヨウ「Web 2.0!いかにビジネスに活かすのか」  http://bs.noma.or.jp/2006/seminar/s02.html#b-2 ◆5月19日(金):Webサービス実証部会/セキュリティ部会 ◆5月22日(月)〜26日(金):XMLコンソーシアムWeek ===================================== 【今後の予定】 ===================================== [公式イベント] ◆6月 1日(木):XMLコンソーシアム総会 ◆6月15日(木):部会リーダーミーティング ◆6月16日(金):ユビキタス・組み込み系部会(IIJ) ◆6月20日(火):XMLコンソーシアム 関西DAY(日本ユニシス関西支社) ◆6月下旬〜7月頭:部会紹介セミナー ※詳細はコンソーシアムや部会からの案内をご確認ください [関連イベント] ◆2006年6月5日(月)〜9日(金)  Interop Tokyo 2006 (後援) http://www.interop.jp/ ◆2006年6月7日(水)  PSLX技術フォーラム2006(協賛) http://www.pslx.org/jp/activities/event-forum-06.html ◆2006年9月14日(木)〜15日(金)  Modeling Forum 2006(後援) ===================================== 【運営委員会から】 ===================================== ◆XMLコンソーシアムWeek、お疲れさまでした  一週間にわたるXMLコンソーシアムWeekを無事に終了することができました。 どの部会も実に見事な成果発表を披露してくださったことに感謝いたします。  またXMLコンソーシアムWeekの関西版となる、XMLコンソーシアム関西DAYを6月20 日に日本ユニシス関西支社で開催いたします。ご興味のある方はどうぞご参加くだ さい。 ◆XMLコンソーシアム総会を開催します  6月1日に品川の東京カンファレンスセンターにてXMLコンソーシアム総会を開催 いたします。当日はGoogle Japan代表取締役社長 村上憲郎様をお招きして「Webの 進化とGoogleの考え方」と題した記念講演も行いますのでぜひご来場ください。 −第6回総会のご案内  http://www.xmlconsortium.org/soukai/060601/060601-info.html ◆部会紹介セミナーを調整中です  6月の下旬から7月頭にかけて部会紹介セミナーを開催できるように調整中です。 詳細が決まり次第、案内をお送りいたします。XMLコンソーシアムの醍醐味(だい ごみ)は部会に参加することですので、これを機会にお目当てとなる部会を選んで 参加してみてください。 ◆メルマガの感想をお聞かせください  XMLコンソーシアムでは、皆さんへの広報手段としてメルマガをより一層活用し ていきたいと考えております。メルマガに関しまして、ご感想/ご要望等がござい ましたら、ぜひお寄せください。 ===================================== 【編集後記】 =====================================  映画「ダビンチ・コード」を見ました。小説版を読んでいたため、一度体験した 謎解きを視覚化して2時間半で駆け抜けた壮快さがありました。しかし小説を知ら ない人にはあまりに展開が早すぎて経緯が把握しづらかったようです。XMLコンソ ーシアムWeekも従来の経緯を知る人と知らない人では講演内容の理解度に差が出て しまうのかなと思いました。XMLの理解を深めるためにも普段からできるだけ部会 に参加して有益さをできる限り享受できるようにしてくださいね。 ===================================== 【このメールマガジンについて】 ===================================== なお、当メールマガジンはXMLコンソーシアム会員を対象に発行しております。 転送する場合は社内に限定するなど、ご配慮をお願いいたします。 次回以降の配信先の変更や追加、および要望はXMLコンソーシアム事務局まで ご連絡ください。 発行人:鶴保征城 編集人:加山恵美 XMLコンソーシアム:http://www.xmlconsortium.org/ 事務局宛てメール :mailto:xmlcons@fsi.co.jp 〒130-0022 東京都墨田区江東橋 2-19-7 富士ソフトABCビル Tel:03-5600-6205 / Fax:03-5600-6431 Copyright(C) 2006 The XML Consortium =====================================