===================================== XML Consortium News X M L コ ン ソ ー シ ア ム ニ ュ ー ス 2009年3月号(2009年3月10日発行) =====================================  今年は戦後2位の暖冬だそうです。愛知県名古屋市ではタンポポの開花が1月6日、 東京都心では梅の開花が1月8日など、春の到来の早さは記録的だったとか。この 高温の傾向は夏まで続くそうです。夏は気をつけたほうがいいかもしれませんね。  メールマガジンの配信先については末尾の案内をご覧ください。 ===================================== 【目次】 ===================================== ◆イベント:XMLコンソーシアムDay パネルディスカッション ◆部会探訪:BI研部会・SOA部会 ◆部会探訪:Webサービス実証部会 ◆活動実績(2009年2月) ◆今後の予定 ◆運営委員会から ===================================== 【イベント】XMLコンソーシアムDay パネルディスカッション =====================================  前号でパネルディスカッションも含めXMLコンソーシアム Dayの全セッションに ついて一通り報告しましたが、パネルディスカッションで出た発言をいくつかダ イジェストで紹介します。(パネリストは敬称略) −−現状のエンタープライズシステムはどうか? ○日力俊彦(SOA部会):XMLには"文書指向"と"データ指向"という2つの側面があ り、これらに大きな変化はない。 また、XMLの本質はWebサービスが登場した時 によく語られていた自己記述性、相互運用性だが、これらはかなり向上したと 言えるだろう。最近は、よりリアルタイム性を求める処理が要求されていて、 EDAの様なリアルタイム・インフラの中で活用されるものや、標準技術としての CBEやCEPといったものも出てきている。 ○松山憲和(Webサービス実証部会):リアルタイム性で言えば、Androidなどの 携帯端末やカーナビなどモバイル端末に注目している。このような機器のスペッ ク向上に伴って、従来のようなクライアント端末としてではなく、今回の実証 実験でデモしたようなサーバ機能を提供するなど、新しい動きになっていくの ではないだろうか。 ○加藤哲義(XMLDB部会):個人的には、エンタープライズシステムよりは、組み 込み分野に関心がある。組込は、エンタープライズシステムに比べ、開発方式 や開発環境の整備が遅れていた分、今後の伸張が期待される。このDayでの XMLDB部会の発表で触れた通り、組込装置間のメッセージ交換にXMLが利用され てきており、そのための組込用XMLDB製品も研究され、今後市場投入されてくる ようだ。 ○遠城秀和(XML設計技術勉強会):エンタープライズだと動きが速く、先が読み にくい。柔らかく作らないとならない。あとXMLは業務データやシステム制御の 分野でも広まっている。 ○牧野友紀(BI研究部会):利用者が多様化したことで、サービスやデータを活 用する目的を事前に把握することができなくなった。例えば、従来のインター ネットの予約や販売システムは、顧客の注文伝票を受け付けるシステム。 この ようなシステムで注文伝票の中身を決めることは難しい。本来は、利用者の目 的を満たす手段に関連する情報だけに注力でき、決定した中身(注文伝票など) をシームレスに適切なサービスに渡せるようなことが理想。、利用者主導とは、 情報処理の所有権(Ownership)が利用者にあるということ。 ○松山:情報システム部門主導のITシステムから利用者主導のシステム開発、例 えばシチュエーションナル・アプリケーションのような手法や情報システム部 門との分業が進行してしていくことが期待される。 ○小林茂(Web2.0部会):業務の効率化が求められている。現状では利用者のや りたいこととシステムで提供されることとのギャップがあるが、ユーザインタ フェースは使いやすくなってきている。 ○藤原隆弘(クロスメディア・パブリッシング部会):クライアントのことを考 えると、インターフェースも重要だ。 ○会場:クラウドの動きは無視できない。XMLにはもっと大きな役割があるのでは? −−今後のエンタープライズシステムの方向性、あるべき形は? ○小林:利用者主体であることが大事。ソーシャルとセマンティックの考え方、 活用が今後は重要になる。 ○松永豊(セキュリティ部会):セキュリティ技術については特にインストール や開発など実践面の情報が不足しているようだ。欲しい時に必要な情報を入手 できる環境が必要だと感じている。 ○松山:インターネットで展開されている、アップル社のApp StoreやGoogle社の Android Marketのように、企業内においても、誰かが気の利いたアプリを作っ て公開し、そこから利用者に合った選んで使えるような仕組みが広がっていく のではないか。 ○加藤:真に幸せなコンピュータ・ユーザとは誰か?それは実務の中でデータ構 造と実データを両方裁量できるユーザである。例えば、研究開発や製品設計な どで仕様項目を、Excelでシート(構造)設計し、実際の値を作りながら、最適 な項目構造を練り上げていくようなユーザは、データ構造、実データの両方に 思い入れを感じられる、極めて幸せな創造的ユーザである。データ構造と実デ ータを現場で決めていけるようなシステム造りにXMLやXMLDBは適している。こ うした創造的ユーザの領域を狙っていけれるのではないか。 ○牧野:データのセマンティックな構造は、可能であればその専門家(業務担当 者など)が作成しメンテナンスすべき。情報システム部門は、データの枠組み をシンタクスとして与えるだけ。XMLによりこれができるようになった。 ○加藤:ところで昨今の不況下、新規開発への投資は控えられ、むしろコンプラ イアンス事故の回避や、現行の運用コストのさらなる削減策といった、いわば 守りのシステムにスポットが当たることになるだろう。これを逆手に取って XMLDBで作れば運用段階で、システム改修費用の削減につながる、といったメッ セージを出していくことも可能であり、実際XMLDB部会ではこれをテーマにした 研究プロジェクトも検討されている。 −−いろいろと理想が述べられていますが、実現するのでしょうか? ○日力:時間はかかるかもしれないが、いつかはできると思う。これまでの技術 革新の歴史と同じように。個人的には限界を感じない。 ○藤原:現状に戻ると、不況の影響もありシステムやメッセージの共有化を進め るべき。コンプライアンスをうまくクリアする仕組みが必要。 ○遠城:近年の動きを見ると、システムや技術は細分化の方向にある。しかしデ ータは細分化と結合化を何度も繰り返すようになっている。XMLでこれが楽に 出来ればと思う。 ○牧野:ここ10年、情報システムはオブジェクト指向により実世界の構造をソフ トウェアに写像することで、実世界で変わらない部分(オブジェクト)と変わ る部分(オブジェクトの関係)を分け、安定性と可変性を維持してきた。しか し、利用者が多様化し、設計当時の目的と異なる目的で既存のオブジェクトを 利用したい要求が高まっている。そのためには、基本的なオブジェクトの構造 は変えず、オンデマンドでオブジェクトと入出力するデータの構造を柔軟に変 形でき(合成や分割)できることが課題。 ○加藤:仕様の凍結とかは、システム屋の都合であり、ユーザにとっては永遠に 要件定義を繰り返し、仕様を改訂していきたいはずである。この両者の妥協点 がアジャイル開発になるのだろうが、大手SIベンダーがアジャイル型プロジェ クトの制度や課金方式などを整備し、運用していくのはなかなか難しいだろう。 創らなくても欲しい機能が実現できる、といったシステムが今後とも求められる。 ○芦田尚人(関西部会・司会):柔らかく作ることと、現場のリクエストをベー スにすることに集約されてきましたね ○加藤:言っておくけど、XMLDBは柔らかいよ!(会場、笑) でもシステムにす ると固くなってしまうのですよね……。これがXMLDBの課題です。 ===================================== 【部会探訪】BI研部会・SOA部会 =====================================  BI(Business Innovation)研究部会とSOA(Service Oriented Architecture) 部会は組織としては2つの部会ですが、ともにビジネス戦略に基づくSOAベースの 情報システム開発手法を研究しています。違いは、主たるアプローチ方法が、ビ ジネス側からか、IT側からかであり、両部会は表裏一体とも言えます。  現状の2部会体制で活動を続けて4〜5年ほど経ちますが、月次の定例部会に顔を 出すメンバーは常に10人を超えるほどメンバーの定着率がいい部会です。それは 部会がテーマに掲げるBIやSOAに関する関心の高さや奥の深さ、メンバー間の結束 の強さがあるのかもしれません。  今年度の定例部会の活動パターンとしては、午前中はBI研究部会、午後は全体 の連絡事項とSOA部会の活動に時間を割り当てています。  2月の定例部会ではBI研究部会の時間帯はWebサービス実証部会などと合同で進 める防災XML関係の活動について最初の話し合いを持ったところです。まずは全体 像を把握し、BI研究部会でできることは何か、メンバー間で意見交換しました。  SOA部会ではSOAの実践に力を入れています。これまで概念など理論に比重が高 かったのですが、できるだけ現実的な場面を想定し、SOA導入時における考察や作 業を実践しています。その様子はSOA講座、いやSOA塾のようです。  より具体的には、メンバーはチームに分かれ架空の企業を想定しSOAを導入する 時に行うべき検討事項を順次考察しています。与えられたシステム関連図やアー クテクチャ概要図から、あるべきビジネスプロセスを検討したり、依存関係を確 認するといった具合です。考察の過程では互いに疑問や意見を出し合い、共同で 課題に取り組んでいます。  中心には現役のITアーキテクトとして日々SOAに基づくシステム構築をこなして いる部会リーダーの日力氏がいて、課題の進め方を指南しつつ、SOAのリアリティ をメンバーに示しています。課題は架空の企業を設定していることもあり、背景 が詳しく把握できずメンバーが戸惑っていると、日力氏は「細部にとらわれず、 まずは全体像から」と状況を大局的に把握するようにと促す場面もありました。 メンバーの多くがSOAについてイメージはできているものの、いざ問題を出される と色々と戸惑うことが多いようです。  部会では今後「Intalio」というビジネスプロセス構築ツールを使い、手を動か しSOAを実感しながら活動を進めていく予定です。 ===================================== 【部会探訪】Webサービス実証部会 =====================================  Webサービス実証部会では防災情報XMLを活用した実証実験の準備が着々と進ん でいます。防災情報XMLとは正式には「気象庁防災情報XMLフォーマット」と言い、 気象警報などの防災情報をXMLベースで記述するフォーマットです。気象庁が中心 となりフォーマットを作成している最中ですが、XMLコンソーシアムも協力してい ます。1月末にはドラフトのVer. 0.9が公開されたところです。  ※参考:プレスリリース:気象庁とXML コンソーシアム   「気象庁防災情報XML フォーマット」についてのご意見を募集 (第2回目)  http://www.xmlconsortium.org/release/pdf/jmaxml20090130.pdf  防災情報XMLはフォーマットを決めるだけでは意味がありません。フォーマット に対応したシステムを開発し、データを有効活用することで多くの効果が生まれ ます。特にいざ自然災害の脅威が発生した時またはその可能性がある時、的確か つ迅速に危険を伝えることが大事です。  1月のXMLコンソーシアム Dayでは防災情報XMLを使った最初の実証実験として、 仮想の気象庁から防災情報XMLデータを地方自治体などの2次プロバイダを経て、 最終的に住民の端末まで送達することを試してみました。斬新な特徴は2次プロバ イダからのデータをPUSHで配信すること、住民は最新鋭のAndroid端末を使ってい る点です。  今後は住民側で受信する端末や形態のバラエティを増やし、より実効的な配信 が実現できるように試してみる予定です。  部会リーダーである松山氏は「防災情報のプラットフォームとなる防災情報専 用のWebOSを開発したい」と意気込みを話しています。これまでのWebサービス実 証部会が得た活動成果に防災情報XMLの活用を重ね合わせることができるというわ けです。  目標として掲げる防災情報のWebOSとは、まだ構想段階ですが、防災情報を集約 するデスクトップとなるようです。いわゆる一般のポータルサイトでは「東京都 の天気」「花粉情報」「雨雲の動き」など自分が必要とするガジェットを自分の 好みで並べることができます。しかしこれらだと特定のサイトにアクセスするこ とや、ブラウザを必要とするなどの制限があります。  防災情報WebOSではデスクトップに必要なガジェットを並べたり、データ提供側 から受信側までユーザーに応じた画面を表示したり、幅広いデバイスに対応する など可能性が広がります。まだ構想段階ですが、これから他の部会とも協力しな がら徐々に開発を進め、5月のWeekや次のDayなどで完成度を高めていく予定です。 ===================================== 【活動実績:2009年2月】 ===================================== ◆2月 4日(水):クロスメディア交流会 ◆2月 6日(金):Web2.0部会 ◆2月12日(木):運営委員会 ◆2月16日(月):関西部会 ◆2月18日(水):XMLDB部会 ◆2月19日(木):BI研究部会・SOA部会 ◆2月20日(金):  XMLマスター:プロフェッショナル(データベース) 直前対策セミナー  http://www.xmlconsortium.org/seminar08/090220/090220-info.html ◆2月23日(月):セキュリティ部会 ◆2月23日(月):Webサービス実証部会 ===================================== 【今後の予定】 ===================================== [公式イベント] ◆3月10日(火):クロスメディア・パブリッシング部会 ◆3月12日(木):運営委員会 ◆3月18日(水):XMLDB部会 ◆3月18日(水):Web2.0部会 ◆3月18日(水):Webサービス実証部会 ◆3月18日(水):セキュリティ部会 ◆3月23日(月):関西部会 ※詳細はコンソーシアムや部会からの案内をご確認ください [関連イベント] ※現在のところ、特にありません。 ===================================== 【運営委員会から】 ===================================== ◆Weekと総会の日程が決まりました  まだ先ではありますが、XMLコンソーシアムWeekと総会の日程が決まりました。 Weekは5月12日(火)〜14日(木)と19日(火)〜21日(木)の6日間が候補となっ ています。この期間で何日かが正式なWeekの日程となる予定です。一方、総会は 6月5日(金)です。詳細が決まり次第、ご案内をお送りいたします。 ◆メルマガの感想をお聞かせください  XMLコンソーシアムでは、皆さんへの広報手段としてメルマガをより一層活用し ていきたいと考えております。メルマガに関しまして、ご感想/ご要望等がござい ましたら、ぜひお寄せください。 ===================================== 【編集後記】 =====================================  確定申告の季節です。今年はe-TaxにしようとICカードリーダーも購入しました。 これでスイカやパスモなど、交通費の履歴も自宅で確認できるようになりました。 会計ソフトも買い換え会計環境が一気に刷新できたのはいいのですが、初年度は 試行錯誤しそうです(汗)。 ===================================== 【このメールマガジンについて】 ===================================== なお、当メールマガジンはXMLコンソーシアム会員を対象に発行しております。 転送する場合は社内に限定するなど、ご配慮をお願いいたします。 次回以降の配信先の変更や追加、および要望はXMLコンソーシアム事務局まで ご連絡ください。 発行人:鶴保征城 編集人:加山恵美 XMLコンソーシアム:http://www.xmlconsortium.org/ 事務局宛てメール :mailto:xmlcons_staff@fsi.co.jp 〒130-0022 東京都墨田区江東橋 2-19-7 富士ソフトビル Tel:03-5600-6205 / Fax:03-5600-6431 Copyright(C) 2009 The XML Consortium =====================================