===================================== XML Consortium News X M L コ ン ソ ー シ ア ム ニ ュ ー ス 2009年12月号(2009年12月10日発行) =====================================  師走で忙しくなってきました。そろそろ来年のカレンダーや手帳が気になるこ ろです。筆者は長らく電子手帳を乗り換えながら使っていますが、紙の手帳類も 捨てがたく使い分けています。皆さんはどちらがお好きですか?  メールマガジンの配信先については末尾の案内をご覧ください。 ===================================== 【目次】 ===================================== ◆XMLを語る:「いずれは紙媒体とWebはより近くなるでしょう」JAGAT千葉弘幸氏 ◆部会探訪:クロスメディア・パブリッシング部会 ◆活動実績(2009年11月) ◆今後の予定 ◆運営委員会から ===================================== 【XMLを語る】「いずれは紙媒体とWebはより近くなるでしょう」JAGAT千葉弘幸氏 =====================================  XMLとゆかりのある方々に過去のXMLとの関わり、またはXMLの現状や将来展望な どについて語っていただきます。今回は社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)のテ キスト&グラフィックス研究会 研究会企画担当 シニアリサーチャー 千葉弘幸氏 です。出版や印刷業界でXMLがどう発展しているか、分野ごとに近況を解説してく ださいました(文中、敬称略)。 ○XMLコンソーシアム:JAGATはいつごろから活動をされていますか? ○千葉:創立が1967年ですので、ほぼ40年前です。印刷および関連産業の発展、 貢献を目的とした経済産業省(旧通商産業省)所管の公益法人となっています。 印刷産業のシンクタンクとして技術から経営戦略までの調査、研究、提言、ま た教育機関として人材育成の機会提供や資格制度の運営なども行っています。 ○XMLコンソーシアム:JAGATがXMLに着目し始めたのはいつごろですか? ○千葉:その前の流れとして、80年代終盤からのデジタル化があります。DTPなど、 画像処理やドキュメント管理でデジタル化が進みました。その後、90年代中ご ろからSGMLが話題になりましたが、当時はコストがかかるなど「まだ実用的で はない」という雰囲気でした。 1998年にXMLがW3C勧告となり、2000年ごろからようやく「次はXMLだ」という風 潮が広まり、JAGATでも情報収集や発信をするようになりました。特に官報の XML化が影響し、出版業界は他業界よりもXMLへの関心は早く、高かったです。 期待というより「やらないと」という意識でしたね。 ○XMLコンソーシアム:スタートは早かったのですね。その後は? ○千葉:実はそれ以降の普及はいまいちでした。すでにデジタル化が定着してい たこともあり、また単一目的、つまりワンソース・ワンユースならDTPで十分だっ たのです。細かい設定などもできましたし。 ただしDTPだと労力やコストがページ数に比例します。ページ数があればあるほ どコストがかさむのです。しかしXMLで自動組版すれば、ページ数に関係なく一 定の作業量とコストで抑えることができるのです。 ○XMLコンソーシアム:ワンソース・マルチユースはいつごろから? ○千葉:着目され始めたのはXMLとほぼ同時期です。クロスメディアという言葉が 出てきたのは2003年ごろです。 ○XMLコンソーシアム:紙媒体は流通のサイクルが決まっているので新しいものに 挑戦しにくいと聞きます。 ○千葉:確かに再販制度で守られているところはありますね。ようやく最近電子 書籍が普及しかけているところです。 ただし辞書は例外でした。辞書のコンテンツは紙の辞書のほか、電子辞書や日 本語変換ソフトでも利用されますから、最初からコンテンツをXMLデータで作り ます。今では子どもの入学祝いに電子辞書が贈られるほど、電子辞書は普及し ているんですよ。 ○XMLコンソーシアム:まさにXMLがぴったりとはまったのですね。 ○千葉:ほかにも新聞はNewsMLがあったのでXML化が早かったです。あと法令関係 もXMLとの親和性が高いです。条文はツリー構造で、コンテンツの量が多いので 自動組版するメリットが大きいからです。あと法改正や正誤表などでもXML化し てあるとコンテンツの管理で有利です。 ○XMLコンソーシアム:ほかにもXML化が進んだ分野はありますか? ○千葉:教育関係も進んでいます。通信教育では、子どもが使用する教科書に合 わせた内容を提供したいという要望があり、コンテンツをXML化して管理してい るところが増えています。 最近の学習塾では出版社から問題を購入し、その問題からテストを作成するこ ともあるそうです。実際に出版社から学習塾へはWordファイルで提供されてい ますが、出版社側は問題のコンテンツをXMLで管理しています。 ○XMLコンソーシアム:教育関係と言えば拡大教科書で動きがありますね。 ○千葉:2008年6月に教科書バリアフリー法が成立しました。これは視覚障害を有 する児童や生徒の教育機会均等などを目的としており、教科書発行者には標準 的な規格の拡大教科書の発行が義務づけられるようになりました。ただし視覚 障害は個人差があり、それぞれが必要とするフォントサイズや配色は違います。 そこでコンテンツがXML化されていれば、スタイルを切り替えることで障害に合 わせた教科書が提供できるようになるわけです。 現段階では教科書の元データは電子化されていますが、XML化されているとは限 らないので「あともう少し」というところです。 ○XMLコンソーシアム:DITAはどうですか? ○千葉:技術文書の製作管理のためのOASIS標準ですね。大手メーカーの製品マニュ アルに適用されつつあります。製品マニュアルですとオンラインマニュアルで の配布も定着していますし、国際化で複数の言語で提供する必要もあり、そこ にDITAが活躍しそうです。 ○XMLコンソーシアム:千葉さんはJAGATのほかにもW3Cにもかかわっているとか。 ○千葉:W3Cの日本語組版のタスクフォースに加わっています。現段階では日本語 における組版の機能を整理しています。紙媒体では細かい組版の機能がありま すが、果たして全部必要か全体を見渡して精査しているところです。実装はま だ先になりそうですが、いずれは紙媒体とWebはより近くなるでしょう。 ○XMLコンソーシアム:どんなコンテンツも電子化、XML化へと進んでいますね。 ○千葉:「コンテンツそのものに価値がある」との理解が大切です。今後の発展 のためには、Webの時代にふさわしいビジネスモデルの発案やソフトウェアやデ バイスの進化が不可欠であり、これらが組み合わさり新しい出版の姿が形作ら れていくのだと思います。 ===================================== 【部会探訪】XML設計技術部会(11月30日) =====================================  XML設計技術部会ではXML設計技術講座を開催しています。これまで3回実施し、 残るは最後の4回目となりました。 【第1回】2009年9月30日(水)(終了)  XML設計技術のための基礎知識 〜XMLインスタンスを作ってみよう〜 【第2回】2009年10月26日(月)(終了)  先人の知恵(ContactXMLのXMLスキーマ)を読み解く(1)      〜 XMLスキーマを作ってみよう 〜 【第3回】2009年11月30日(月)(終了)  先人の知恵(NewsMLのXMLスキーマ)を読み解く(2)      〜 共有性を高める辞書を作ってみよう 〜 【第4回】2009年12月17日(木)  設計作業を効率化する便利な道具 〜パターンを使ってみよう〜  http://www.xmlconsortium.org/seminar09/091217/091217-info.html  セミナーは冒頭に講義がありますが、途中からグループに分かれてXMLインスタ ンスを作るなどの作業をします。実際に周囲の参加者と手を動かしながら考えな くてはならないので、緊張感もあり、XMLを体感することができるようになってい ます。  部会は講座終了後あるいは合間の日程で開催しており、講座の準備や調整を行 います。次回の講義をどのような内容で誰がやるか、使用するツールは何にする か、難易度は参加者に適しているかどうかなど、講座を裏で支えています。  これまで講座を3回実施し次回で最終回を迎えるにあたり、部会では最終回の到 達目標をどこに定めるか相談していました。「自分たちで作ったスキーマをツー ルを使ってバリデーションかけて、正しく通ればいいフィニッシュになりますね」 という声も出ました。最終回には有終の美を飾ることができそうです。  部会は講座の主催以外にも活動があります。気象庁防災情報XMLフォーマットと、 OASIS標準となっている緊急時の警報を交換するためのCAP(Common Alerting Protocol)との相互交換が可能かどうか調査しています。これは相互交換を可能と する設計ノウハウ獲得を図るところに目的があります。  2つの標準は目的が似ているのでおおよその項目は共通していますが、不足して いるものや相違があるものなどを分野別にチェックしています。例えば火山の噴 火情報であれば、日本には「レベル3(入山規制)」などレベル分けがありますが、 CAPには「urgency」や「severity」などの項目があり、微妙に扱いや基準が違い ます。  防災情報に関する運用や実情に関する話も交えつつ、有意義な情報交換になっ ています。調査結果はいずれWeekなどで報告する予定です。 ===================================== 【活動実績:2009年10月】 ===================================== ◆11月 2日(月):セキュリティ部会 ◆11月 6日(金):Webサービス実証部会 ◆11月16日(月):関西部会 ◆11月17日(火):クロスメディア・パブリッシング部会 ◆11月25日(水):BI研・SOA部会 ◆11月30日(月):第3回XML設計技術講座  『先人の知恵(NewsMLのXMLスキーマ)を読み解く(2)              〜 共有性を高める辞書を作ってみよう〜』 ===================================== 【今後の予定】 ===================================== [公式イベント] ◆12月 4日(金):Webサービス実証部会 ◆12月 7日(月):関西部会 ◆12月 9日(水):次世代Web活用部会 ◆12月17日(木):クロスメディア・パブリッシング部会 ◆12月17日(木):第4回XML設計技術講座  『設計作業を効率化する便利な道具 〜パターンを使ってみよう〜』  http://www.xmlconsortium.org/seminar09/091217/091217-info.html ◆12月18日(金):セキュリティ部会 ◆12月18日(金):Webサービス実証部会 ◆12月24日(木):XMLDB部会 ※詳細はコンソーシアムや部会からの案内をご確認ください [関連イベント] ◆2010年3月11日(木):ソフトウェアジャパン2010(協賛)  http://www.ipsj.or.jp/10jigyo/forum/software-j2010/index.html ===================================== 【運営委員会から】 ===================================== ◆メルマガの感想をお聞かせください  XMLコンソーシアムでは、皆さんへの広報手段としてメルマガをより一層活用し ていきたいと考えております。メルマガに関しまして、ご感想/ご要望等がござい ましたら、ぜひお寄せください。 ===================================== 【編集後記】 =====================================  XML設計技術講座では作業する都合もありますが、資料は事前にSNSにアップロ ードされるので参加者は各自資料をダウンロードし、ノートパソコンで見るよう にしています。ペーパーレスでエコな講座です。最近ではこういう講座のスタイ ルが定着してきたようです。 ===================================== 【このメールマガジンについて】 ===================================== なお、当メールマガジンはXMLコンソーシアム会員を対象に発行しております。 転送する場合は社内に限定するなど、ご配慮をお願いいたします。 次回以降の配信先の変更や追加、および要望はXMLコンソーシアム事務局まで ご連絡ください。 発行人:鶴保征城 編集人:加山恵美 XMLコンソーシアム:http://www.xmlconsortium.org/ 事務局宛てメール :mailto:xmlcons_staff@fsi.co.jp 〒130-0022 東京都墨田区江東橋 2-19-7 富士ソフトビル Tel:03-5600-6205 / Fax:03-5600-6431 Copyright(C) 2009 The XML Consortium =====================================