===================================== XML Consortium News X M L コ ン ソ ー シ ア ム ニ ュ ー ス 2010年1月号(2010年2月10日発行) =====================================  関東では2月に入ってから寒い日が続き、雪も何度か見られました。Twitterか ら各地の降雪が報告され、リアルタイムで降雪の様子が分かるのは面白い体験で した。  メールマガジンの配信先については末尾の案内をご覧ください。 ===================================== 【目次】 ===================================== ◆XMLを語る:「弱視の児童生徒に拡大教科書を」 筑波大学付属視覚特別支援学校 宇野和博教諭 ◆予告:XMLコンソーシアムWeek 3月10〜11日、16〜18日 ◆活動実績(2010年1月) ◆今後の予定 ◆運営委員会から ===================================== 【XMLを語る】「弱視の児童生徒に拡大教科書を」 筑波大学付属視覚特別支援学校 宇野和博教諭 =====================================  XMLとゆかりのある方々に過去のXMLとの関わり、またはXMLの現状や将来展望な どについて語っていただきます。今回は筑波大学付属視覚特別支援学校の宇野和 博教諭です。昨年から本会の顧問も務めてくださっています。拡大教科書をめぐ る実情と展望などを語ってくださいました。(文中、敬称略) ○XMLコンソーシアム:拡大教科書とその背景を教えてください。 ○宇野:拡大教科書は弱視の児童生徒のために文字や図形などを大きくした教科 書です。まずは弱視の説明からいたします。一般的に矯正視力が0.3未満が弱視 と言われていますが、見えにくさには個人差があります。視力以外にも視野狭 窄(きょうさく)、暗転、欠損、色覚異常、明暗への順応性、眼振、など、多 岐にまたがります。 現在視覚に障害があり、障害者手帳を持つ人は約30万人います。多くが高齢者 ですが、文部科学省の実態調査によれば、小学校から高校までの学齢段階では 6800人います。うち2000強が拡大教科書を求めています。視力には個人差があ りますが、およそ18〜26ポイントの文字サイズであれば、7〜8割の需要をカバ ーできます。 弱視の見えにくさは十人十色ですので、その程度を分かりやすく理解してもら うために読書困難度という形で表現してみます。例えば読書困難度10%ですと ルビなどの小さい文字だけが読めず、90%ですと大きな文字の本文も読めない といった具合です。ある先行研究によると、視力0.1ですと22ポイントが適切で あるという報告があります。0.01になるとはっきりしませんが、かなり大きな 文字が必要になります。 ○XMLコンソーシアム:必要なものは必ずしも同じではないのですね。 ○宇野:大切なのは選択の自由を確保することです。児童生徒が自分の状況に応 じて教科書を選ぶことは保証されるべきです。それは教育の質を確保すること につながります。健康用語でQOLがあり、これは「Quality of Life(生活の質)」 の略ですが、私の場合「これは別のQOL(Quality of Learning)」だと話して います。 拡大教科書は高価なものが多く(教科書出版社からは十分に発行されておらず)、 ボランティアの手により制作することも多いです。費用や手間がかかるので十 分に行き渡っていません。 ○XMLコンソーシアム:拡大教科書がないとどうするのでしょうか? ○宇野:ルーペや拡大読書器などを使います。なかには「社会に出たら拡大教科 書のようなものはないのだから、ルーペや拡大読書器などを使いこなせるよう に訓練すればいい」という意見もありますが、こうした道具と拡大教科書はど ちらがいいかではなく、両方使っていくもの、まさに車の両輪なんです。 確かに道具を使いこなすスキルは重要ですが、道具を使うとそれだけ労力が増 えてしまい非効率です。視覚特別支援学校(いわゆる盲学校)に入学したある 生徒は、初めて拡大教科書を見た時に「これなら目が疲れることなく、思う存 分勉強できる」と喜んでいました。 ○XMLコンソーシアム:社会の動向はどうですか? ○宇野:近年、拡大教科書普及に向けた動きが活発化し、(拡大教科書を制作す る上で著作権の二次利用が支障となっていたため)2003年に著作権法が改正さ れ、2008年に教科書バリアフリー法が成立しました。原案は民主党から提案さ れたのですが政権交代前であり、当時の与党内での検討を経た結果、少し後退 してしまいました。義務が努力義務になる、無償化は義務教育の期間中のみで 高校が置き去りにされるなどです。 高校生向きの教科書は種類が豊富で対応するのは大変ですが、視覚特別支援学 校が使う教科書は46点と定められているので、「せめて特別支援学校のものだ けでも」と訴えています。 ○XMLコンソーシアム:教科書会社はどうなのでしょうか? ○宇野:教科書協会内には拡大教科書普及促進小委員会が組織され、文部科学省 では高等学校段階における拡大教科書標準規格等検討会が設置されていますが、 「1冊作るのに900万円近くの追加費用が発生する」という意見もあり、なかな か厳しいようです。拡大教科書に限りませんが、出版物はDTPソフトを使ってい るためページ数に比例して労力やコストが増えてしまうからです。 ○XMLコンソーシアム:XMLとの出会いはいつでしたか? ○宇野:2003〜4年ごろ、XMLなら拡大教科書の普及に役立つと気付くようになり ました。XMLならコンテンツとスタイルを別に持つことができるからです。その 後、2009年3月ころだったでしょうか、ある講演会でXMLコンソーシアムのクロ スメディアパブリッシング部会メンバーから声をかけてもらいました。 ○XMLコンソーシアム:XSL-FOを研究する過程で、部会有志がXML自動組版ツール 「FANTaStIKK」を開発したころですね。適用分野を模索する中で、先生の講演 をお聞きし、拡大教科書がぴったりはまると気付いたわけです。 ○宇野:教科書バリアフリー法では教科書の電子データの提出が義務化されまし た。しかしまだ多くのデータ型式はPDFです。これがXML文書ならスタイルを変 更すればいいだけで拡大教科書のオンデマンド印刷ができるのに、というとこ ろです。今後はよりアクセシブルなPDFやXML文書で提供されることを期待して います。 ○XMLコンソーシアム:当会に期待することは? ○宇野:教科書は教育の「一丁目一番地」です。自立支援、社会参加の面からも 重要です。ぜひとも拡大教科書が必要な児童生徒に負担なく行き渡るようにし たいと思っています。 また読書のバリアフリーは行政サービスにも応用できると思います。教育のバ リアフリーを突破口に横展開できるといいと考えています。 教育にXMLを活かし、教育のバリアフリーを実現するために、今後も引き続き、 データやマルチメディアなど技術的な提案や助言をいただけたらと思います。 ===================================== 【予告】XMLコンソーシアムWeek 3月10〜11日、16〜18日 =====================================  XMLコンソーシアムWeekを3月10〜11日、16〜18日の5日間の日程で開催いたしま す。今回は「社会とビジネスの明日を支えるXML」をテーマに、各部会の成果報告 を行います。  基調講演には慶應義塾大学名誉教授であり W3C の Associate Chair for Asia も務められる斎藤信男先生に御登壇いただけることとなりました。デモやパネル も豊富に用意しております。 ◆第9回XMLコンソーシアムWeek開催のご案内  http://www.xmlconsortium.org/seminar09/100310-11+16-18/100310-11+16-18-info.html ○3月10日(水) 会場:日立ソフト(品川シーサイド)  13:00-14:00 基調講演  14:10-17:10 次世代Web活用部会 ○3月11日(木) 会場:日立ソフト(品川シーサイド)  13:00-14:30 クロスメディアパブリッシング部会  14:40-15:40 招待講演  15:50-18:20 XMLDB部会 ○3月16日(火) 会場:日本IBM(箱崎)  13:00-14:00 セキュリティ部会  14:10-15:40 XML設計技術部会  15:50-16:50 招待講演(調整中)  17:00-18:30 全体パネル ○3月17日(水) 会場:日本IBM(箱崎)  13:00-14:00 気象庁防災情報XMLを使った実証実験  14:10-16:50 ビジネス・イノベーション研究部会/SOA部会  17:00-18:00 全体デモ ○3月18日(木) 会場:日本IBM(箱崎)  13:00-13:30 全体デモ  13:40-14:40 関西部会  14:50-15:20 次世代Web活用部会  15:30-17:00 Webサービス実証部会  17:10-18:40 ミニパネル  皆様のふるってのご参加をお待ち申し上げております。 ===================================== 【活動実績:2010年1月】 ===================================== ◆1月13日(水):Webサービス実証部会 ◆1月18日(月):関西部会 ◆1月19日(火):クロスメディア・パブリッシング部会 ◆1月21日(木):BI研、SOA部会 ===================================== 【今後の予定】 ===================================== ◆2月15日(月):関西部会 ◆2月17日(水):Webサービス実証部会 ◆2月24日(水):BI研、SOA部会 [公式イベント] ◆2月 3日(水)  XMLマスター:プロフェッショナル(データベース)直前対策セミナー  http://www.xmlconsortium.org/seminar09/100203/100203-info.html ◆3月10〜11日、16〜18日:XMLコンソーシアムWeek  http://www.xmlconsortium.org/seminar09/100310-11+16-18/100310-11+16-18-info.html ※詳細はコンソーシアムや部会からの案内をご確認ください [関連イベント] (メディア・パートナーである翔泳社様からご案内いただきました) ┏━<Developers Summit 2010>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃  技術者コミュニティとの連携から生まれた総合ITコンファレンス ┃ ┃  2010年2月18日(木)・19日(金) 会場:目黒雅叙園   ┃ ┃  主催:株式会社翔泳社       参加料:無料(事前登録制) ┃ ┗━◆最新情報・参加登録はコチラ◆ ⇒ http://codezine.jp/devsumi/2010 ━┛ ◆2010年2月18日(木)〜19日(金)  Developers Summit 2010(オフィシャルコミュニティ)  http://codezine.jp/devsumi/2010/ ◆2010年3月9日(火)〜11日(木):ソフトウェアジャパン2010(協賛)  http://www.ipsj.or.jp/10jigyo/forum/software-j2010/index.html ===================================== 【運営委員会から】 ===================================== ◆メルマガの感想をお聞かせください  XMLコンソーシアムでは、皆さんへの広報手段としてメルマガをより一層活用し ていきたいと考えております。メルマガに関しまして、ご感想/ご要望等がござい ましたら、ぜひお寄せください。 ===================================== 【編集後記】 =====================================  有識者インタビューでお話を聞く中で、社会が想定している能力を持ち得ない とdisabilityになるのだと気付かされました。言い換えれば社会が想定した身体 能力を持ち得ないと障害となるということです。体に限った話ではなく精神や人 格でも同じことがいえないだろうかと思いました。社会や多数派が健常者を定め ているのだなと感じました。 ===================================== 【このメールマガジンについて】 ===================================== なお、当メールマガジンはXMLコンソーシアム会員を対象に発行しております。 転送する場合は社内に限定するなど、ご配慮をお願いいたします。 次回以降の配信先の変更や追加、および要望はXMLコンソーシアム事務局まで ご連絡ください。 発行人:鶴保征城 編集人:加山恵美 XMLコンソーシアム:http://www.xmlconsortium.org/ 事務局宛てメール :mailto:xmlcons_staff@fsi.co.jp 〒130-0022 東京都墨田区江東橋 2-19-7 富士ソフトビル Tel:03-5600-6205 / Fax:03-5600-6431 Copyright(C) 2010 The XML Consortium =====================================